ダンスホールは踊らない

3種類の人間がいる。ダンスホールに一緒に行った人と踊る人間、ダンスホールにいる人と踊る人間、そして、ダンスホールで踊らない人間だ。ぼくはダンスホールには行かない。

人間は2種類に分けられる。コンビニで2L100円の水を買うか1L170円くらいの水を買うか悩む者と、そもそも2L100円とかで売っているのを知らない者だ。

打ち合わせの空き時間が長く、作業が3時間くらいできる場合は、2LのペットボトルをPCの横に置いて作業することが多い。1日2Lの水を飲むと、健康に良いらしいからだ。飲みにくいけどがまんして飲む。

コワーキングスペースや知り合いの会社で2Lペットボトル片手に作業を始めると決まって「それ多くない?」とか「そんな水飲むの?」とか聞かれる。

飲めるのだ。人間は意外と2Lの水くらい簡単に飲めるのだ。飲めるのだけど、いまはそんなことは問題じゃない。

おそらく、「それ多くない?」とか「そんな水飲むの?」とか聞いてくる人は普段コンビニとかで水を買わない人のような気がする。いまコンビニとかでは、2L入りのペットボトルが100円で売っている。これは本当にすごいことだと思う。

ぼくがいちから、富士山の周辺から湧き出ている水を調達し、2Lのペットボトルをつくって零さないようにギリギリまで入れて栓をして配送したらとんでもないおコストがかかりそうだけど、それを100円でやってしまうのだ。これは本当にすごい。

かたや、1L?くらいの水があるのはご存知だろうか。おそらく、コーラとかお~いお茶とかアクエリアスの平べったいタイプのペットボトルに入ってるやつと同じくらいの分量のやつだ。あれを見かけたことがある人は多いと思うが、それの水のやつの値段を知っている人はいるだろうか。2Lが100円、1Lくらいのやつはさていくらでしょう。

答えは170円。この話を人にすると、そもそも「2Lのペットボトルが100円で売ってるわけない」「そんなわけない。絶対に。」「水を買うやつの気が知れない」とかの返答になって、1Lくらいのやつの話にならない。ウソだと思う人は帰りにちょっと見てみて欲しい。でもぼくが言いたいのはそこではなくて、2Lが100円で売っているのに、1Lになると170円に上がることについてだ。

信じられるだろうか。量は減っているのに、金額は上がっている。量は減らして価格は上げるなんて超一流の営業マンでも相当タフな交渉になりそうだが、水は超すごい。どっちも超売れる。

あと水は地球上で唯一、3個の顔を持つ物質で、液体、気体、個体にそれぞれ変わることができる。ダイヤモンドも切れる。柔よく剛を制すという言葉の体現者なのである。水はほんとにすごい。

さて話は水を売ることに戻って、ぼくは、ちょっと飲みたい時でも必ず2L買うし、またその逆で、ちょっとでかすぎるから1L推奨の人もいるのだろう。

これは要は、ちょっと違うんだけど(ちがうんかーいと独り言を言いつつ)よく出てくるやつに似た例で、新聞におまけをつける話と一緒だと思う。新聞が4,000円で売っていて、電子版だと2,000円、でも新聞+電子版も4,000円ですよ、みたいなやつ。えっ!新聞半額にしてくれんの!?って言ってぼくはすぐ飛びついてしまうけど、そんなテンションで、新聞+電子版を選ぶ人がほとんどで、電子版がちょっと、新聞だけの人は当然いなくなる。だが選択を、新聞か電子版の2択に質問を絞った場合、意見が分かれるところだろうが安い方の選択肢を選ぶ人が当然多くなる。新聞+電子版という第3の選択肢を加えたことで、通常選ばれていなかった、商品を売ることができるというわけだ。実は、新聞の本来の値段も2,000円かもしれないにもかかわらずだ。

つまり、2Lのペットボトルが100円、1Lのペットボトルが50円(量がすくないんだから当然の価格設定だしぼくだったら普通にそうしちゃいそうだけど)だった場合、供給側は別にどっちを売っても変わらないし、お客さんは1Lを買う人の方が多いんじゃないだろうか。どっちを買っても値段は変わらないからね。でも少ない方の価格を上げて170円にすると、供給側の利益は増えるし、お客さんは別に離れていかずに、両方を同じくらい買う。いやーコンビニ本当に深い。マジ深いわーと言いながら、さっきも100円の方を買った。