ダンスホールは踊らない

3種類の人間がいる。ダンスホールに一緒に行った人と踊る人間、ダンスホールにいる人と踊る人間、そして、ダンスホールで踊らない人間だ。ぼくはダンスホールには行かない。

なぜTSUTAYAではDVDを4枚以上借りると1枚100円にディスカウントされるのか

TSUTAYAにDVDを借りに行ったら、4枚借りただけなのに、料金は2000円くらいだった。ぼくはレンタルショップの期日だけは結構守る男だ。レンタルショップの期日すら守れない男に一体なにが守れるというのだろう。

いまではいろんなサービスが出て、レンタルショップに行かずとも映画が見られるようになった。ちょっと前まではHuluを使ったりもしたけれど、あの狭い通路を他の人に気を使いながらすれ違い、お目当ての作品を掘り起こすことにこそ魅力があると思っている。そう自分に言い聞かせている。

どれくらい前からだろう、TSUTAYAではDVDを4枚以上借りると、1枚100円になる料金プランが登場した(他のレンタルショップもおそらくそうなのだろう、ぼくは借りないから知らないけど)。そうなると、どうなるのか。きっとみんな4枚とか5枚とか、下手したらもっと借りてしまうのだと思う。誰だってそうするし、ぼくもそうする。

話はまた少し変わって、つけ麺屋さんにたまに行くのだが、あそこも料金システムがおもしろい。だいたいどこもそうだと思うのだが、「大盛り・中盛り・普通盛り」のどれを頼んでも料金は同じになっている。つけ麺屋さんはおそらく、「大盛り・中盛り・普通盛り」の価格をそれぞれ3つ用意するのではなく、大盛りの価格を提示しダウンサイズしたお客さんからの差額で利益を最大化させているのだろう。

1週間に見ることができるDVDのぼくの「普通盛り」はおそらく2枚か3枚だが、そうすると4枚借りるよりも倍近く高くなってしまう。そうなるともう、1枚100円の魔力で4枚以上借りてしまうことはざらだ。自分の限界はもうとっくに超えているにもかかわらず。

そうするとどうなるのか。借りたDVDを全部見られることはかなり稀だと思うが、見ることができないDVDを保有しているため遅延が発生するか、ぼくみたいに律儀な男は見られる分だけ見てちゃんと返却し、次に見ることができなかったDVDをもう1度借りることになるのではないか。

極めて個人的な体験からだが、この1週間にDVD4枚以上という設定がまず絶妙だ。ぎりぎり1週間で見られるかもしれないし、見られないかもしれない。あとは、大量に借りる人がいる中で、1枚1枚正規の価格で貸すよりも、4枚以上をまとめて渡してしまい、そこから遅延金を巻き上げるか、借りたのに見ることができなかったことで再来店の機会をコストをまったくかけずに促すことで得られる利益の方が大きいということなのだろう。ぼくはいままではTSUTAYAに直々に返しに行っていたが、ポストで返せるやつ便利だなとそれを試してみたら、投函するタイミングが遅れてしまったのか遅延料金が加算され次回のレンタル時にはいつもの5倍ほどの出費が降りかかってきた。

いまでは誰もが知るサービスになったAirbnbやUberが凄まじいスピードで成長することができたのは、人が生きる上で発生するコストの上位3つの内2つに目をつけたことで、家賃(収入の18%)、食費(同17%)、交通費(同16%)がそれにあたるそうだ。

TSUTAYAへの出費はこのどれにも当てはまっておらず、もし作り上げる新しい素敵なサービスもそれにあてはまらないなら、どうやってお客さんに「普通盛り」を頼ませないか(または気づかせずに「大盛り」を頼ませるか)、またそれにもかかわらずまた来てもらえるかを設計することはきっと重要なファクタになるだろう。